目指せLEVEL3!
本ウエブサイトで目指すPerfumeの音楽の理解とは、キャッチフレーズ的に「LEVEL3の理解」ということが可能かもしれない。
まず、LEVEL0はPerfumeの音楽を愛する方全てを呼ぶことにしよう。その中で、楽器経験や「コード」などの知識があり、例えば自分で伴奏しながらPerfumeの曲の弾き語りなどができるような、いわば単に聴くだけでなく、演奏などによってあるレベルで楽曲の再構成が可能である方をLEVEL1と呼んでみる。さらに、その中で楽曲分析等に興味を持って、機能和声論などを用いて解釈を試みようとしている方をLEVEL2と呼ぼう。
ところが、実際に既存のバークリーメソッドなどの機能和声分析に従ってPerfumeの音楽の理解をしようとしてもなかなかうまくいかないことに気がつく。本ウエブサイトが目指すのは、このLEVEL2を超えたLEVEL3の理解である。
LEVEL3の理解のためには様々な視点が必要であり、かつ、それの探求が本ウエブサイトの目的の一つでもあるわけであるが、ここでは、機能和声分析の限界を見ることでLEVEL3理解のスコープの一端を提示したい。
機能和声分析が持つ限界の重要な部分の一つとして、その分析対象が限られていることを挙げることができる。そして、その対象の限界は、「広義の限界」、「狭義の限界」の二つに分けて考えることが可能である。「広義の限界」とは、「一般的な近代西洋音楽が対象としてきた範囲」による限界、そして、「狭義の限界」とは、「一般的な近代西洋音楽の範囲内で機能和声分析が有効となる範囲」という限界である。
近代西洋音楽は、@メロディーAリズムBハーモニーを「音楽の三要素」と標榜し、音色や音響など、それらが理論化できなかった要素を巧みに排除して理論構築を行ってきたということができる。例えば、音色の問題に関しては、使用する楽器を限定することによってその問題を演奏する楽器の種類に置き換え、かつ、作曲家が書いた楽譜から常に同様な音を出す訓練を演奏家に施すことによって再現性を担保することにより理論構成の対象外に追いやることに成功した。しかしながら、本来、音楽とは、音色や音響のみならず、演奏を行うパフォーマンスという「視覚的要素」などまでを含めた、全体像を捉えることなしに理解することはできない。したがって、機能和声論は、近代西洋音楽の対象を超えた、本来の広い範囲での音楽の理解には十分に機能することができない。これが広義の限界である。
しかし、それでは、近代西洋音楽が対象としたと考えられる範囲に「音楽」を限定すれば、機能和声論によってそれを完全に理解することは可能なのであろうか。答はやはり否であり、これが機能和声論の「狭義の限界」である。
機能和声論、特にバークリーメソッドが最も有効に働くのは、単純化して述べれば、三度積み重ね和音とドミナントモーションが中核となって構成される音楽の時といえる。したがって、三度積み重ねを基礎としない和音やドミナントモーションに基づかない音楽を分析しようとすると、それが調性音楽であったとしても困難を生じることとなる。もちろん、機能和声論においても、四度や五度のヴォイシングは扱われるものの、それはあくまで三度積み重ねを基礎としつつ、テンションが加わった積み重ねが多い和音として捉えた上での声部配置の問題としてである。また、ドミナントモーションを回避する理論としてモードがあるが、これは(私の知る限りでは)必ずしも満足の行く形で理論構成されているとは言い難い。このように、調性音楽の中でも機能和声論が有効に機能する範囲は限られており、これが機能和声論の「狭義の限界」である。そして、Perfumeの音楽にはこのような狭義の限界を超えた和声が欠かせない要素となっていることから、機能和声論での分析は困難となるのである。
しかしながら、機能和声論を捨て去る必要は全くない。LEVEL2で得た資産を最大限に活用しつつも限界を認識し、その弱点に囚われることのないよう、注意深くLEVEL3を目指して行こう。
PTO: ver1.0 (2014/02/15)