LEVEL3を支配するドリアンの和声感
「Perfume「ポイント」 ー 「願い」の木霊」で採り上げた、Cメジャーにおけるファ#の音は、Cを基調とした場合、Cリディアンスケールの特性音となっているとともに、平行調であるAマイナーを基調として考えるとAドリアンスケールの特性音ともなっている。
これらはいずれもCメジャーまたはAマイナーには存在しない音であり、GメジャーあるいはEマイナーに属する音と考えられ、これが調性感を浮遊させ、独特な和声感を産み出している。
実は、この音は、PerfumeのアルバムLEVEL 3における様々な曲で使われている。上で採り上げたポイントを始めとして、Party Maker、Sleeping Beauty、Dream Landなどでも聴くことができ、まさに「LEVEL3のさまざまな曲をつなぐ特性音」ということもできよう。そして、特にこの和声感が強く前面に押し出されているのがClockworkである。
ClockworkのキーはGマイナー(あるいはB♭メジャー)であると考えられるので、調号は♭が2つ(シとミ)となる。ところが、イントロで聴かれるシーケンス風のフレーズの最後にナチュラルのミが登場する。

このナチュラルのミの音はシーケンス風フレーズだけではなく、バッキングをしている「コード」にも含まれており、全体の基調となっている。このナチュラルのミがドリアンの特性音である。

しかし、Clockworkにおけるこの音の使い方は、他の曲と比べてやや特異ともいえる。他の曲では、通常の調性感の中で、この音色を一時的に見せるように使っているのに対し、Clockworkではこれを基調として用いている。当初、ClockworkをアルバムLEVEL 3のメインとして位置づけようというアイデアがあったようであるが、これはアルバム全体を支配するドリアンの和声感をこの曲が特徴的に示すことが一つの要因だったのかもしれない。
Clockworkという曲は、インストであればメセニーの曲のような素晴らしい雰囲気が創り出されているが、これには、このドリアンの和声感のみならず、コーラスのヴォイシング、展開部におけるドリアンからの逸脱などもその一因となっている。これについては稿を改めたい。
PTO: ver1.0 (2014/01/05)