音の聴き方

音の聴き方

複数の声部が進行している時、外声よりも内声の動きは通常聞き取りづらく、普段聞いている時には強く認識されていないこともある。しかしながら、その部分に注目するようにすると、その内声の動きが聞きやすくなるというようなことがある。

例えば、以下は、シークレットシークレットのイントロ後の8小節を3回繰り返したものである。ただし、2回目だけは、左チャンネルの中音部以外の音量を下げ、ハープの音を聞きやすくしている。この音は1回目で必ずしも聞き取りやすくなかったとしても、2回目を聞いた後の3回目では、聞き取りやすさが違っているように感じられる。かつ、一回これを認識した後は、あまり意識しなくてもこの音が聴き取れるようになっているのではないだろうか。このように、再生環境を変更しなくても、意識の重点を変えるだけで音楽というものは違って聴こえるようになるものなのである。

音楽を聴く時、人間には過去の記憶を活用しながら理解しようとする傾向があり、特に、同じ曲を聴く場合には、普段聴いている音との「違い」に意識が向き、その点により敏感に反応するようになる。普段と異なる再生環境で同じ曲を聴くと、普段聞こえなかった音が聞こえるような体験をすることがあるかもしれないが、それをもって、再生環境をよくしなければ音楽が理解できないなどと決して思わないで頂きたい。上の例で見たように、音楽が普段とは違って聴こえたりすることは、単に再生環境の違いのみに起因するものだけではないのである。

音楽の理解に当たっては、再生環境をを変えることよりも、「自分を変えること」こそが重要なのである。

PTO: ver1.0 (2014/02/23)